先立つ人の思い。
何を思いながら天へ召されていくのでしょう。
荒く激しい呼吸の最後の時間に,家族の声が届くのだろうか?
先立つ者の思いは家族へ届くのだろうか?
この思いに触れる心の準備を常にしておきたい。
その後のために…
『その日のまえに』(重松清・著/文春文庫)を読みました。 重松さんに家族を描かせたらもうたまりません。バスの中で読んでいて、涙をこらえるのに大変でした。もう勘弁してくださいよ、重松さん。
その日とは自分が、あるいは自分にとって大切な人が死を迎える日。自分が迎えるその日、気がかりは自分がいなくなった後の家族のこと。大切な人が迎えるその日、それは自分がその日を迎えるより100倍も哀しく切ない。その人が自分の命のことより、残された家族が無事に生きていけるのだろうかと思いやっているのが判るだけに切ないのだ。来る日も来る日も思い悩み、人知れず涙を流し、その涙の数だけ体が衰弱し透明になっていく。そしてその日がくる。生きていたしるしは日常の中でどんどん薄れていくが、先立つ者の想いは残された者の心にいつまでも残る。それこそが生きた証。
出版社の紹介文を引きます。 僕たちは「その日」に向かって生きてきた―。昨日までの、そして、明日からも続くはずの毎日を不意に断ち切る家族の死。消えゆく命を前にして、いったい何ができるのだろうか…。死にゆく妻を静かに見送る父と子らを中心に、それぞれのなかにある生と死、そして日常のなかにある幸せの意味を見つめる連作短編集。
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