『買えない味』(平松洋子:著/ちくま文庫)を読みました。 まずは出版社の紹介文を引きます。 電話一本で、ネットのワンクリックで、老舗の鍋セットや地方の旬の野菜、海産物が手に入る時代。それは便利だけれど、ホントにそれでいいのでしょうか?一晩寝かせたお芋の煮っころがし、土瓶で淹れた番茶、風にあてた干し豚の滋味…日常の中にあるおいしいものたち。お金では決して買えない味がある。自分の身の回りにある買えない味の数々を綴ったエッセイ集。第16回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。
平松洋子さんはカッコイイ。そう、本当にクールだ。平松さんにとって、おそらく日常は決して退屈なものではない。凡人には何気ない日常も、平松さんには彼女にしか見えない側面がある。それは稀有な感覚。静かで地味な日常も、稀有な感覚を持って生きる者にとってはしみじみ感じ入る要素に満ちているものだ。私にとって谷崎潤一郎氏の『陰翳礼賛』に比肩し得る随筆です。出雲・出西窯の砂糖壺と白掛地釉を私も使いたい。
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