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2010年11月30日(火) 

「武ある者が武なき者を足蹴にし、才ある者が才なき者の鼻面をいいように引き回す。これが人の世か。ならばわしはいやじゃ。わしだけはいやじゃ」

 強き者が強きを呼んで果てしなく強さを増していく一方で、弱き者は際限なく虐げられ、踏みつけにされ、一片の誇りを持つことさえも許されない。小才のきく者だけがくるくると回る頭でうまく立ち回り、人がましい顔で幅をきかす。ならば無能で、人が好く、愚直なだけが取り柄の者は、踏み台となったまま死ねというのか。

「それが世の習いと申すなら、このわしはゆるさん」

 長親は決然といい放った。その瞬間、成田家臣団は雷に打たれたがごとく一斉に武者面をあげ、戦士の目をぎらりと輝かせた。

                                     (本書 上巻 P185より抜粋)

 

 

『のぼうの城』(和田竜/著・小学館文庫)を読みました。

 

冒頭の一節にさしかかったとき、私の全身に鳥肌が立ちました。私の心がボッと炎と燃えた気がしました。何かしら熱いものがこみ上げ「ウォー」と雄叫びをあげんばかりに激したのです。この瞬間、私はこの物語の主人公・のぼう様(成田長親)にのぼせ上がったと言えましょう。

 

裏表紙の紹介文を引きます。

 


 

〈上巻〉

戦国期、天下統一を目前に控えた豊臣秀吉は関東の雄・北条家に大軍を投じた。そのなかに支城、武州・忍城があった。周囲を湖で取り囲まれた「浮城」の異名を持つ難攻不落の城である。秀吉方約二万の大軍を指揮した石田三成の軍勢に対して、その数、僅か五百。城代・成田長親は、領民たちに木偶の坊から取った「のぼう様」などと呼ばれても泰然としている御仁。武・智・仁で統率する、従来の武将とはおよそ異なるが、なぜか領民の人心を掌握していた。従来の武将とは異なる新しい英傑像を提示した四十万部突破、本屋大賞二位の戦国エンターテインメント小説!

 


 

〈下巻〉

「戦いまする」
三成軍使者・長束正家の度重なる愚弄に対し、予定していた和睦の姿勢を翻した「のぼう様」こと成田長親は、正木丹波、柴崎和泉、酒巻靱負ら癖のある家臣らの強い支持を得て、忍城軍総大将としてついに立ちあがる。
「これよ、これ。儂が求めていたものは」
一方、秀吉に全権を託された忍城攻城軍総大将・石田三成の表情は明るかった。我が意を得たり、とばかりに忍城各門に向け、数の上で圧倒的に有利な兵を配備した。
後に「三成の忍城水攻め」として戦国史に記される壮絶な戦いが、ついに幕を開ける。


 

表紙の写真がこれです。

右が「のぼう様」こと忍城・城代・成田長親、左が石田治部少輔三成。

装画は漫画家・オノ・ナツメ氏です。

こうして並べると両雄のキャラクターが際立ちます。

理知的でありながら誇り高く熱い男、石田三成に対し、

「でくのぼう」を略し「のぼう様」などと呼ばわれ、何をやっても不器用な大男、成田長親。

この両雄が相まみえた戦国史に残る「忍城水攻め」。

武士が武士であった時代、男が男であった時代に、時と場所を得た強者どもが存分に戦う。

そのような男どもに囲まれた男勝りの甲斐姫の恋。

「のぼう様」の戦に馳せ参じ、命を賭す百姓どもは男のみならず、女、子どもまで。

登場人物の生き生きとした様に心躍らせ、熱き思いに涙し、戦国の荒ぶる心に昂進する自分がいました。

私の大好きな本に加わった一冊でした。

 

 

 


閲覧数1,922 カテゴリ日記 コメント4 投稿日時2010/11/30 00:32
公開範囲外部公開
コメント(4)
時系列表示返信表示日付順
  • 2010/11/30 07:22
    さん
    歴史物は余りでも読んでみたい(^ー^)ノ
    次項有
  • 2010/11/30 09:39
    一気に読みましたよ。
    「成田長親」の魅力にまいってしまいました。
    次項有
  • 2010/11/30 21:02
    > 将さん

    これは是非読んでみて下さい。

    後悔させません。
    次項有
  • 2010/11/30 21:04
    > まつやまみかんさん

    こんなヒーロー、想像だにしませんでした。

    図らずも石田三成の魅力にも目覚めてしまいました。
    次項有
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