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2010年12月31日(金) 

「涙とともに竹を切った人間でなければ、人生の意味は分からない」

                                  (本書P58より)

 

『美女と竹林』(森見登美彦/著・光文社文庫)を読みました。

作者、登美彦氏が主人公の物語です。物語といっても大したストーリーがあるわけではありません。登美彦氏がなぜか竹を切りたいと思った。そして友人の明石氏を誘って竹林に出かける。しかし竹林は想像以上に手強かったというだけの話である。その中身のない物語を氏の止めどもなく拡がる妄想で膨らませ膨らませ328Pの本にしてしまったのだから開いた口がふさがらない。

しかし、森見氏のこの暴挙とでもいうべき所行は氏の類い希な才能の明石であるとも言える。こんなつまらん物語を外連味有り余る文章で煙に巻いて読者を森見ワールドに引き込んでしまう力業。只者ではありません。

 

 

裏表紙の紹介文を引きます。


 「これからは竹林の時代であるな!」閃いた登美彦氏は、京都の西、桂へと向かった。実家で竹林を所有する職場の先輩、鍵屋さんを訪ねるのだ。荒れはてた竹林の手入れを取っ掛かりに、目指すは竹林成金!MBC(モリミ・バンブー・カンパニー)のカリスマ経営者となり、自家用セグウェイで琵琶湖を一周…。はてしなく拡がる妄想を、著者独特の文体で綴った一冊。


 

 

この物語に何らかの意味を求めるとすれば、それは「友情」であろう。登美彦氏は友人の明石氏に問うた。

 「竹切らん?」

明石氏は答えた。

 「ええよ」

 これほどの友情、厚い信頼があろうか? どうして竹を切るのか、竹を切ることに何の意味があるのか、などという問いかけをすることなく、「ええよ」とだけかえす明石氏の登美彦氏に対する信頼の厚さははどうだ、人間の大きさはどうだ、男気はどうだ、このいい加減さはどうだ。この「ええよ」はすなわち「君がそう思うのなら、きっと竹を切ることは人類の最重要課題なのだろう。そうであるなら、僕はよけいな疑問をさしはさむことなく喜んで君と一緒に竹林に行こう。僕にも司法試験受験という重要課題がある。しかし、竹を切りに行ったところで試験に落ちる僕ではない。安心してくれ。僕がええよと言ったからには、そして、君と僕が組むからには、もう目的は達成されたも同然だ。たとえその目的が人類がこれまで達成し得なかったものだとしても……」という思いをシンプルに言い表した一言に違いない。

 『美女と竹林』という題名から、竹林を舞台にしたロマンスがテーマかと思いきやさに非ず。竹林に地球の未来を託し、竹林に己が幸せ、すなわち金と美女との出会いを求めた男とその友との管鮑の交わりを描いた物語なのである。

 


閲覧数925 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2010/12/31 13:23
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