■バックナンバー
■外部ブログリンク
■RSSフィード
RSS 1.0 RSS 2.0 Atom 1.0
■このブログのURL
http://onomichi-sns.jp/blog/blog.php?key=31411
2012年11月07日(水) 

「どうだ、これで気が済んだか?」

「はい」

 と以登は言った・

「江口孫四郎は好漢だが、二度と会うことはならん。そなたは、婿となる男が決まった身だ」

「わかっておりまする。有難うございました」

 と以登は言った。

 そのときには以登にも、もうわかっていたのである。江口孫四郎とひとたび試合をとねがった、あのはげしい渇望が恋であり、その気持ちをまた、どういうわけかむくつけき風貌の父親が察知して、罵るかわりに粋を利かせて孫四郎に会わせたのだということも。だが恋ならば、それは思い切るしかなかった。

                                 (本書P246「花のあと」より)

 

 『花のあと』(藤沢周平・著/文春文庫)を読みました。再読です。

 朝、家を出る時、なんとなく藤沢を読みたいと思い本棚からこれを取り出した。どんな話だったのか記憶が定かでない。一度読んだものの、強烈な印象を残していないので、かえって再読するのに好都合でもある。

 登場人物が皆、心にある種の悲しみや切ない思いを抱いており、その様が愛おしい。そして藤沢の小説らしく、主人公が己が弱さを知りつつもそれに甘んじることを潔しとせず、矜持をもって生きている。藤沢の本を閉じたとき、いつも私は「世の中、捨てたものじゃない」と清々しい気持ちになる。

 やっぱり藤沢はイイ。

 

 

出版社の紹介文を引いておきます。


娘ざかりを剣の道に生きたある武家の娘。色白で細面、けして醜女ではないのだが父に似て口がいささか大きすぎる。そんな以登女にもほのかに想いをよせる男がいた。部屋住みながら道場随一の遣い手江口孫四郎である。老女の昔語りとして端正にえがかれる異色の表題武家物語のほか、この作家円熟期の秀作7篇。


 

 


閲覧数1,731 カテゴリ読んだ本 コメント2 投稿日時2012/11/07 23:54
公開範囲外部公開
コメント(2)
時系列表示返信表示日付順
  • 2012/11/08 11:11
    時代小説は良いですよね…
    宮部みゆき、池波正太郎、永井路子と読んできましたが、藤沢周平も読んでみたくなりました(*^o^*)
    次項有
  • 2012/11/09 08:17
    > みほたまさん

    ぜひ、そうなさってください。藤沢周平氏の小説はけっしてがっかりさせることはないと思います。私はしばらく宇江佐真理氏を追いかけてみようかと思っています。
    コメントありがとうございました。
    次項有
  • 次項有コメントを送信
    閉じる
    名前 E-Mail
    URL:
■プロフィール
ウェルズさん
[一言]
ハードボイルド好きのチキンハート男
■この日はどんな日
ほかの[ 11月07日 ]のブログは、
■最近のファイル
■最近のコメント
■最近の書き込み