2013年11月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:3711ページ
ナイス数:2420ナイス
味を追う旅 (河出文庫)の感想
住むところの近くに行きつけの店がある。その店はいわゆる高級店ではなく、安くてうまい店である。蕎麦屋では酒を飲む。旅先でも、その町その町にうまい店を知っている。食事付きの旅館には泊まらない。どこでもありきたり料理しか出ないからだ。ホテルに泊まり街中にあるうまい店に出かける。朝飯はその町の市場に出かける。市場の周辺の店は、食材を知り尽くした玄人相手の店だけに、材料、味、値にウソが無い。客に気を遣わせるような偉そうな店主のいる店には行かない。人におもねることはしない。吉村昭氏はそうした人だ。手本としたい。
読了日:11月28日 著者:吉村昭
蜩ノ記 (祥伝社文庫)の感想
十年後の八月八日を切腹する日と期限を切って家譜編纂を命ぜられた戸田秋谷の至った境地に感銘を受けた。いつかやってくる死ではなく、その日には必ず訪れる死を覚悟したとき、秋谷には常人につきまとう迷いが無くなったのではないか。常住死身の境地、まさに”武士道とは死ぬことと見つけたり”である。いくら命があっても志が無ければ、それはただ生きているだけの抜け殻である。またその生き方に矜持が無ければ美しくない。物語とは云え、一人の武士(もののふ)の生き方に心が震えた。直木賞授賞に異議なし。
読了日:11月28日 著者:葉室麟
ロスジェネの逆襲の感想
半沢直樹シリーズは体に悪い。読み始めたら止められない。仕事中に読むわけにいかないから家で読むことになる。夜遅くなる。胸のすく大逆転劇に読み終えても興奮冷めやらず、しばらくは眠れないだろう。現在、夜中の1時半。「いつの世にも、世の中に文句ばっかりいってる奴は大勢いるんだ。だけど、果たしてそれになんの意味がある」という半沢の言葉を噛みしめながら、酒をやっています。もうしばらく飲めば少しは眠気がやってくるか・・・・
読了日:11月26日 著者:池井戸潤
雨の日には車をみがいて (集英社文庫)の感想
読んでいる間ずっとわたせせいぞう氏の『ハートカクテル』風の画が頭に浮かんでいました。綺麗な透明感のある色彩、スタイリッシュな世界観、1980年代後半でした。題名『雨の日には車をみがいて』は愛車を洗車した後に雨に降られるのを厭がるような男のかっこ悪さを皮肉ったものだ。もちろん私はそのような男ではない。それどころか、車をいつもピカピカにみがくことを恥ずかしいと思う複雑な自意識を持つ、誠にややこしい男である。子供の頃、運動会の日の為に親が買ってくれた真っ白に新しい運動靴をわざわざ土で汚して履いていった人間です。
読了日:11月24日 著者:五木寛之
鉄の骨 (講談社文庫)の感想
何が「正義」か? それはそのことを考える者がいる環境、立場、その時の状況、抱える事情によって異なる。「正義」などというものは、それを判断する人間の主観であって、時代によっても変わるほど危ういものだ。「ルールを守ること」=「正義」というのも一見正しいようだが、そのルールに欠陥があれば、或いは不公平があれば必ずしも正しいとは言えない。そう言いながら「欠陥」とはなにか、「不公平」とはなにかを考えていくと、これまたそれを判断する者の主観といわざるを得ない。あぁ、単純にこれが正義だと信じることが出来た頃はよかった。
読了日:11月21日 著者:池井戸潤
事例解説 すぐわかる選挙運動 ―ケースで見る違反と罰則―の感想
つまらん。2200円出して買ったことをくやむ。この程度のことなら買うまでもなかった。公からガイドラインを出していただければ十分ではないか。
読了日:11月17日 著者:三好規正
Fellows! 総集編 乙嫁語り&乱と灰色の
世界 (BEAM COMIX)の感想
『乙嫁語り』は既刊五巻まですべて持っています。ですから何を今更なのですが、気になったのは「クレールさんの日常茶飯事」。森薫唯一の単行本未収録作品となれば読んでみたくなるではないですか。おまけに表紙を飾るもう一人の美女。入江亜季さんの『乱と灰色の世界』のヒロイン乱ちゃんとか。さらに読んでみたくなるではないですか。読んでみました。まぁ、わざわざ取り寄せて読むほどのものではなかったかも。早く『乙嫁語り』続編を発刊していただきたい! と、強く言っておく。
読了日:11月17日 著者:森薫,入江亜季
風の中のマリア (講談社文庫)の感想
オオスズメバチ(ヴェスパ・マンダリニア)の物語だったとは。題名からの想像を全く裏切られた。しかし、その裏切りはけっしてがっかりではない。非常に興味深い小説でした。以前、竹内久美子さんの御本で「生物はみな利己的自己複製子の乗り物<ヴィークル>なのであって、どうあがこうともその事実からは逃れられない」といった話を読ませていただいたが、蜂の世界においてはその事実がこれほどまでに生態に現れていようとは。驚きである。すべての生物のふるまいはゲノムによってあらかじめプログラムされたものなのだと改めて痛感した次第。
読了日:11月17日 著者:百田尚樹
晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語 (ポプラ文庫ピュアフル)の感想
良く晴れた秋の休日。「こんな天気のいい日に、家の中でじっとしているなんてもったいない」と図書館に出かける主人公の少女。いいですね。すばらしいですね。本好きにとって一つの理想がここにある。悪人が登場せず、人の死なない日常のミステリ。今、真夜中の十二時だが、早くも図書館に行きたくなってきた。禁断症状である。明日は土曜日。図書館に行こう。
読了日:11月15日 著者:緑川聖司
鼠―鈴木商店焼打ち事件 (文春文庫 し 2-1)の感想
容姿端麗、頭脳明晰、高学歴、行いにそつなく、隙がない、女性にもてる、そんな男がいたとする。逆に頭脳は明晰なれど、小学校すら出ていない、容姿醜貌(はっきり言って醜男)、風采揚がらず、しかし仕事の上では才気煥発、常人には及びもつかない独特の発想を持ち、自分の信ずる道を盲目滅法まっしぐらに突き進む、そんな男がいたとする。どちらが人として魅力的か。私が友に選ぶとすれば迷わず後者だ。金子直吉、スゴイ人物が神戸の経済界に、いや、世界の経済界にいたものだ。それにしても大阪朝日新聞の唾棄すべき所行・・・恥を知りなさい。
読了日:11月13日 著者:城山三郎
どこまでやったらクビになるか―サラリーマンのための労働法入門 (新潮新書)の感想
著者の大内先生とは、先日、ご講演を聴き、その後食事をしながら親しくお話をさせて頂きました。雇用や労務問題に関するしっかりとしたお考えに感心しきりでした。政府には是非、大内先生のお考えを政策化して欲しいものです。さて本書ですが、サブタイトルどおり入門書として読みやすい内容になっています。次の言葉にしびれました。「法というのは、正義によって支えられるものです。裁判所は、それを国家権力によって実現するものです。しかし、正義を国家権力でエンフォースするのは、本当は最後の手段であるべきです」 全く同感です。
読了日:11月1日 著者:大内伸哉
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