『いなくなれ、群青』(河野裕・著/新潮文庫nex)を読みました。 創刊100年の歴史を持つ新潮文庫が次世代ラインナップとして刊行した「新潮文庫nex」の一冊です。 http://shinchobunko-nex.jp/special/001.html
まずは出版社の紹介文を引きます。 11月19日午前6時42分、僕は彼女に再会した。誰よりも真っ直ぐで、正しく、凛々しい少女、真辺由宇。あるはずのない出会いは、安定していた僕の高校生活を一変させる。 奇妙な島。連続落書き事件。そこに秘められた謎......。僕はどうして、ここにいるのか。彼女はなぜ、ここに来たのか。やがて明かされる真相は、僕らの青春に残酷な現実を突きつける。 心を穿つ新時代の青春ミステリ、「階段島」シリーズ。
河野氏の小説を読んだのは初めてです。なんだか肩に力の入った題名。その題名の意味がわかったとき、私の胸は温かく満たされた。ピストルスター、その気高き光を無くさずにすむのなら、その光は僕を照らす必要はない。人は本当に美しく気高いものを守るためなら、自分の存在を賭すことができる。トランプゲームで相手に勝ちを譲ってしまう小学二年の少年、どこまでも真っ直ぐ、正しいことの正しさを信じている高校一年生の少女、どこまでも悲観的で常にあきらめることを受け入れる高校一年生の僕、若さは不完全で危ういけれど、切ないほどに素敵だ。 河野氏はそうとう村上春樹氏を意識している様子である。スタイリッシュな会話などにニヤリとさせられます。ただ、もうすこし力が抜けてくるとしっくりしてくるのではないでしょうか。先が楽しみです。
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”時計の秒針はいつも虐げられている。”
”休息は愛せても、暇は愛せない。”
”君はちょっと極端なんだ。正しいことの正しさを信じすぎている。”
”僕は暗闇の中にいればいい。気高い光が、僕を照らす必要はない。”
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