へぎの上に、老舗の色とりどりの練り菓子が並ぶ。
一つ摘まんでは口に運び、お茶を飲み、小首を傾げて悩んだのちに、もう一つ摘まんで口に運ぶ。
色は違うのに、味はほとんど同じ。
美味しいってことと、美しいってことは共通のテーマだけど、少し物足りない。
伝統を守りながら一工夫出来れば、作るのももっと楽しくなるかも。
『(坂木司リクエスト!) 和菓子のアンソロジー』(坂木司ほか:著/光文社文庫)を読了。 まずは出版社の紹介文を引きましょう。 「和菓子」をモチーフに、短編を一作書いていただけませんか?読書家としても知られる『和菓子のアン』の著者・坂木司が、今いちばん読みたい人気作家たちに執筆を依頼。日常の謎を描くミステリーから、壮大な世界観を展開するSF、心温まる優しい怪談まで、さまざまな読み味の作品が揃いました。疲れたときに読みたくなる、宝箱のような一冊。 こうしたアンソロジー企画は作家諸氏の個性が際立って楽しい。与えられたテーマに沿って一定水準以上の物語を紡いでしまう能力はさすがはプロと感心しきり。なかでも北村薫「しりとり」は群をぬく。他には日明恩「トマどら」、近藤史恵「迷宮の松露」が私好みであった。言い出しっぺの坂木司「空の春告鳥」は『和菓子のアン』の後日譚として楽しい。近藤史恵リクエスト『ペットのアンソロジー』、大崎梢リクエスト『本屋さんのアンソロジー』も楽しめそうだ。いずれ購入することになろう。
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