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2010年12月19日(日) 

 いつであったか、地下鉄の中で向こう側に座る男を睨みながら、祖母が私の耳元で囁いた。

「おまい、まちがったってつっかけで地下鉄に乗ったりするんじゃあないよ」

 以来私は、サンダルどころかスニーカーをはいて外出したこともない。個人的にはさしたる気構えも思想もあるわけではないから、江戸前の躾に呪縛されているのであろう。東京都は元来、それくらいよそいきの街であった。

                                    (本書100Pより)

 

『ネクタイと江戸前』(日本エッセイスト・クラブ編/'07年版ベスト・エッセイ集)を読みました。

裏表紙の紹介文を引きます。


浅田次郎氏による表題作は、生家では勉強しろなどと説教されたことはないが、人前に出るときには厳重な服装点検があり、これこそ江戸前の気風であると説く。佐藤愛子氏は「日本人の底力」で、我慢を美徳とする教育を受けてきたことを明かす。名手たちの61篇の短文の饗宴には、日本人の知恵と生きることの喜びが溢れている。


 名文家の文章である。それぞれ味わい深いが特に好きなのは廣淵升彦氏の「コンドルと車輪の物語」だ。現代人から見ても想像を超える高度なインカ文明を有した南米が、聖なる太陽を崇めるあまり、太陽に似た丸い形をしたものをいっさい生活に用いなかったために、スペイン人たちの泥に汚れた車輪の上に据わった大砲の前に為す術もなく敗れた。それから四百年以上、白人に支配され、インカの神々を拝むことを禁じられキリスト教を信仰することを強制された。女たちは犯され、男たちは奴隷として過酷な労働を強いられた。「コンドルは死んだがいつかよみがえる。そして自由に大空を飛ぶようになる。その日インカもまたよみがえるのだ」 この言葉が虐げられた人々の唯一の希望であったという。

 カバーに使われた安野光雄氏の画もすばらしい。


閲覧数20,210 カテゴリ日記 コメント6 投稿日時2010/12/19 22:03
公開範囲外部公開
コメント(6)
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  • 2010/12/19 22:34
    さん
    今日は.そのインカ帝国の元となったシカン帝国の黄金の仮面(アーモンドアイをもった)を見てきました。
    絶大な権力を持った影にはそれを支えた多くの人達の犠牲をちゃんと語ってました。
    次項有
  • 2010/12/19 22:54
    > 将さん

    おお、興味深い展示ですね。

    兵庫県立美術館でもやってくれないかな……
    次項有
  • 2010/12/20 10:03
    只今、インカ文明に繋がって行くシカン展を愛媛県美術館では開催いたしております。私、関係者。

    シカン文化の宗教国家は、いったいどれだけの血を流したのかと思うところもありますが、黄金の細工や土器、シカン神などなど 展示をみていると、はるか昔に思いをはせ、人間について考えさせられます。インカ文明につながる、アンデスで栄えた文化の一つです。 

    実際に触れるアルパカWOOLのフワフワの感触は癒されますよ。きもちいい~~

    19日は将さんが来てくださいました(*^_^*)
    1月29日~4月3日は岡山デジタルミュージアムで開催されます。岡山の方が近いですね。その次は北海道で開催です。
    次項有
  • 2010/12/21 21:30
    > まつやまみかんさん

    岡山まで150㎞。

    自転車で行ける距離ですね。

    岡山に行きま~す。
    次項有
  • 2010/12/22 03:07
    > ウェルズさん
    すごーい!
    岡山へは自転車で行くんですか?
    この前は呉方面に来られたし…素敵です。
    次項有
  • 2010/12/22 07:34
    > まつやまみかんさん

    景色を楽しみながら、ぽたぽたと……

    一泊して、翌日、ミュージアムへ行きましょうか。
    次項有
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