『降霊会の夜』(浅田次郎・著/朝日文庫)を読み終えました。 初老の私はしばしば女と歩く同じ夢を見る。
人生をふり返るに「あのとき、ああすれば良かった」との思いが累々たる屍のように積み重なっている。おまけに人の心はその屍を直視するだけの強さを持っていない。忘れるのです。いや、忘れてしまうだけの強さも持ち得ず、無理やり忘れたふりをするのです。「---何を今さら。忘れていたくせに」 この一言が読者たる私の心に突き刺さる。浅田氏らしい小説でした。「角筈にて」や「ラブ・レター」に共通する浅田氏の情の世界がここにあります。
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