♪ 野を越え山越え肥えてしまったこのからだ 『笑う招き猫』(山本幸久・著/集英社文庫)を読みました。山本幸久氏のデビュー作です。私はもう既に山本氏の「お仕事小説」ファンですから、氏のデビュー作を何時かは読みたいと思っておりました。そんな折、この小説が第2回「酒飲み書店員&営業が選んだ一冊」大賞受賞作を獲っていたことを知り、これはもうぐずぐずしていられない、すぐに読まねばと手に取った次第です。 http://www.webdoku.jp/event/sakenomi/event_sake02.html
裏表紙の紹介文を引きます。 男と並んで愛誓うより、女と並んで笑いを取る、それが二人のしあわせなのだ!駆け出しの漫才コンビ、『アカコとヒトミ』。超貧乏で彼氏なし、初ライブは全く受けずに大失敗。おまけにセクハラ野郎の先輩芸人を殴り倒して大目玉。今はぜんぜんさえないけれど、いつかはきっと大舞台。体に浴びます大爆笑―。夢と笑いとパワーあふれる傑作青春小説。第16回小説すばる新人賞受賞作。 第16回小説すばる新人賞、第2回「酒飲み書店員&営業が選んだ一冊」大賞を受賞していることから当然といえば当然ですが、やはり山本幸久氏の「お仕事小説」にハズレはありません。漫才師として食っていくことは楽じゃない。世の中を吹く風は厳しく冷たい。様々な困難に遭遇しながらも、くじけずいじけず真正面から笑いと向き合う二人。その姿は清々しく、人として仕事に対する姿勢はかくあるべしというに相応しいものだ。山本氏は読者に対し、真っ向勝負の直球をど真ん中に投げ込んでくる。そしていつも感じるのは、山本氏が登場人物たちに注ぐ視線は常に暖かく優しいということ。読者は山本氏のそんな視線を感じることで、山本氏の人柄に惚れ込んでしまうのだと思う。
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