充分楽しかった三年間は、十五のとき想像したとおりだった。私は私のままだった。そうしてあのとき私はふと、そんなすべてがいやになったんだと思う。どこへ行っても私が私であること、それはつまりどこへも行けないことだった。そういうことに安心している私自身もいやだった。バス停に走りこんでくるバスに乗っても行けない場所に私はどうしても行きたく、また見たことのないその場所に恐怖を覚えたのだ。 (本書P272~P273・「夏の出口」より抜粋)
『きみが見つける物語 十代のための新名作 休日編』(角川文庫)を読みました。このところ用事が多く、じっくりまとめて読書する時間が取りにくい。そんなときにこうした短編小説撰はたいへん重宝する。
この「休日編」に収められているのは次の短編小説。
(記載は タイトル・ 著者・ 収録元・ 出版社の順)
それぞれについてひと言コメントをつけてみる。
「シャルロットだけはぼくのもの」 「ローマ風の休日」 「秋の牢獄」 「春のあなぼこ」
このシリーズ(きみが見つける物語・十代のための新名作)を読むのはこれが二冊目。前に読んだのは「切ない話編」であった。小説に優劣をつける気はないが、好みとしてこちら「休日編」に軍配を揚げたい。
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