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2012年02月16日(木) 

『戻り川心中』(連城三紀彦・著/光文社文庫)を読みました。

 

まずは裏表紙の紹介文を引きます。

 


大正歌壇の寵児・苑田岳葉。二度の心中未遂事件で、二人の女を死に迫いやり、その情死行を歌に遺して自害した天才歌人。岳葉が真に愛したのは?女たちを死なせてまで彼が求めたものとは?歌に秘められた男の野望と道連れにされる女の哀れを描く表題作は、日本推理作家協会賞受賞の不朽の名作。耽美と詩情―ミステリ史上に輝く、花にまつわる傑作五編。


 

 

 

 

これはもう素晴らしい小説です。独特の暗さ、湿った質感。そこはかとなく漂う不道徳ななまめかしさ。連城三紀彦氏の美しい文章はそうした情趣に溢れている。収められているのは花にまつわる五編のミステリ。描かれているのは恋。いや、秘めたる深い情念という意味では「色」といったほうがぴったりくるだろう。私がこの物語にみたのは、たとえば阿佐田哲也氏の小説に見るピカレスクあるいは滅びの美学、そして谷崎潤一郎氏に共通する耽美。男と女の情念を深くえぐって描きながらも、書き手自身の心は醒め、まなざしはあくまで冷徹と見える。連城氏は登場人物の激情をいかに読者に伝え汲み取らせるかを計算しつくして書いていらっしゃる。氏の抑えた筆致に、かえって読者は登場人物の心情を己の心の目を通して慮ることとなる。読者は謎が解け殺人の真相が見えた時の意外性にあっと驚くと同時に、主人公が罪を犯したその動機にこそ心惹かれ、その余韻に暫し放心するだろう。五編の短篇全てが数あるミステリ小説の中で最高峰に位置する珠玉の名作揃いといっても決して過言ではない。 いつまでも私の記憶に残るにちがいない。

 


閲覧数706 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2012/02/16 20:33
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