「ただねぇ」 母親が案ずるような声になった。 「私が言うのも何だけど、あの子の入れ込んでも報われるかどうか分からないわよ。芝居以外のことにはホントに無頓着だから」 「いいんです」 牧子は即答した。 「報われなくて諦めるならとっくの昔に諦めてます」 「あら、勇敢」 母親はそう言ってころころ笑った。 「じゃあいいことを教えてあげる。あの手の男は女の子がいくら秋波を送ったところでまったく響かないわよ。機会があればこっちから押し倒してやるくらいの意気込みで迫らないとね」 (本書P299より)
『シアター! 2』(有川浩・著/メディアワークス文庫)を読みました。
まずは裏表紙の紹介文を引きます。 「2年間で、劇団の収益から300万を返せ。できない場合は劇団を潰せ」―鉄血宰相・春川司が出した厳しい条件に向け、新メンバーで走り出した『シアターフラッグ』。社会的には駄目な人間の集まりだが、協力することで辛うじて乗り切る日々が続いていた。しかし、借金返済のため団結しかけていたメンバーにまさかの亀裂が!それぞれの悩みを発端として数々の問題が勃発。旧メンバーとの確執も加わり、新たな危機に直面する。そんな中、主宰・春川巧にも問題が…。どうなる『シアターフラッグ』!?
『シアター!』を読んだのがちょうど二年前、『シアター!2』が上梓されたのが昨年の1月、当然購入していたのだが積読本になっていた。他に読みたい本が目白押しであったこともあるがは何をおいても「2」を読みたいとじりじりさせるほどのものでなかったのも事実。しかし、「2」を読んでみてびっくり。面白さは「1」の二倍。登場人物がそれぞれの個性を持って活きている。そのうえ有川さんお得意の恋。有川さんの描く恋は結構古風なのです。想いは強いのですが、相手のことを考えてその想いをなかなかストレートに出せない。もうこのイジイジ感たまりません。デレデレ~っとなります。もう一つ、心得違いをしている輩に高潔な心意気でピシャリと毅然たる態度を示すところ。対半角スペース然り、対テアトルワルツの支配人然りです。実に小気味良い。快感!
|