明かりの届かない屋上の隅に行って空を見上げると、早くも月が沈みかけていた。 北の空に、北斗七星を探す。一年中見つけることが出来るので、『北の大時計』と呼ばれる道案内の星座。迷う旅人を、幾度となく救ってきたその輝き。 その光を見つめながら、私はコーヒーを飲む。静かに瞬き続ける星。漂うコーヒーの香り。頬に当たる冷たい空気。 ああ、今、この世界がすべてならいいのに。 (本書P54-55より)
『夜の光』(坂木司・著/新潮文庫)を読みました。 『和菓子のアン』につづく坂木司氏の二冊目です。この小説もイイですね。坂木氏の描く小説世界はなかなか素敵です。
出版社の紹介文を引きます。 約束は交わさない。別れは引きずらない。大事なのは、自分に課せられた任務を遂行すること。正体を隠しながら送る生活の中、出会う特別な仲間たち。天文部での活動を隠れ蓑に、今日も彼らは夜を駆ける。ゆるい部活、ぬるい顧問、クールな関係。ただ、手に持ったコーヒーだけが熱く、濃い。未来というミッションを胸に、戦場で戦うスパイたちの活躍を描く。オフビートな青春小説。
ゲージ君、君はアケルダマ卿の生まれ変わりかね?(何のことか分からない人は「英国パラソル奇譚シリーズ」を読むべし)
<ゲージ> 「そりゃないよ、ハニー」 <ジョー>「私は蜂蜜じゃないし、あなたの恋人でもない」
なんて面倒くせぇやりとりなんだ? と思う。 でも、慣れるとちょっといいねと思えるから不思議だね。天文部の4人のスパイ、ブッチ(黄川田祐一)、ギィ(安田朱美)、ゲージ(青山孝志)、ジョー(中島翠)、君たちはすてきな仲間だ。こんな仲間に出会えるなら、私はもう一度高校生に戻りたいよ。たとえ苦しい受験勉強があってもね。
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