あんたは、俺のことを、たいしたもんだって言ってくれた。だから言うけど__あんたは俺にとって、たいしたもんなんだ。 今度、その女の子__くじらのぬいぐるみ抱いてた女の子に会ったら言ってくれ。どれが現実かなんて判んない。この世界が現実だなんて証拠、思いつけない。けど__俺がここにいて、あんたの隣にいることは、これは絶対、何かの証拠だ。少なくともここに一人、あんたがいてくれて良かったって人間がいるってことは、絶対、何かの証拠だ。何かの・・・・・・。 (本書P330より)
『ひとめあなたに・・・』(新井素子・著/創元推理文庫)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。 女子大生の圭子は最愛の恋人から突然の別れを告げられる。自分は癌で余命いくばくもないのだと。茫然自失する圭子の耳にさらにこんな報道が―“地球に隕石が激突する。人類に逃げ延びる道はない”。彼女は決意した。もう一度だけ彼に会いに行こう。練馬から鎌倉をめざして徒歩で旅に出た彼女が遭遇する4つの物語。来週地球が滅びるとしたら、あなたはどうやって過ごしますか。
物語のはじまりは好きだったのです。いいなぁ、こういう始まり方、青春だなぁ、なんてね。しかし、中盤はつらい、痛い。そりゃぁそうでしょう。一週間後に世界が滅ぶのですから。人類が滅亡する話なのですから。人間ってのは悲しい生き物です。同時に、人間ってのはコワイ生き物です。特に女性ってのは不可解でコワイ。あぁ、読むんじゃなかったと後悔した中盤。でも終盤、朗が圭子に言った一言「俺はあんたが思ってくれる程たいした男じゃない。けど、あんたがそう思ってくれてんなら、本当に、たいした男になりたい」に救われた。めでたし、めでたし。いやめでたくはないですけれど・・・
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