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「お前、田中冬二がわかるのかい」 と、叔父に冷やかされた。 私は、十三歳だった。 十三だろうが、少年だろうが、田中冬二の詩がわからないような義務教育を受けたおぼえはない。田中冬二の詩は、だれにでもわかる。 だが、その美しい抒情の世界に潜む田中氏の、人生に対する誠実と謙虚の姿が、当時の私には、さすがに看てとれなかった。 … [続きを読む] |
……日々のいろいろな雑念から離れ、自然に湧いてくる想いに身を委ねられれば、我々の日々の営みとは別に絶えず流れ続ける時間と、意識が一つになるということだ。一人静かに飲んでいると、時が経っていく。生きている自分が過不足なく、ただそこに在る。父は私が三二の時に六五で逝ってしまったが、それでも二人だけで飲んだ記憶はある。今一人で飲む時と同じように、その時も時間は静かに流れていた。
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