「夫婦ってえのは、あきらめがかんじんなのだぜ。じたばたしてもはじまらねえ」
裏表紙の紹介文を引きます。 今こそ読みたい人情と希望。庶民の哀歓を描く名作短篇集深川の小料理屋に勤める長屋住まいのなみ。両親を亡くしてから親代わりとなり面倒をみてきた弟の友吉が、嫁になる相手を連れて挨拶にやってきた。幸せな気持ちで出迎えたものの、高価そうな身なりの二人を見て心が乱れ…表題作をはじめ、「チャンネル銀河」の人気番組『松平定知の藤沢周平をよむ』が選んだ、庶民の哀歓を描く10編。物語の舞台を巡る散策マップ付。[解説・松平定知]
本書に取り上げられているのは江戸の下町を舞台にした市井ものです。そこに住む職人や大工、博打打ちの男、女郎や水茶屋で働く女など、裏店に住む庶民の悲喜こもごもが描かれます。それぞれ皆、社会的には弱者という境遇にあって、道に迷い過ちも犯しますが、最後には小さな幸せを見つけることができます。そこにある小さな希望は藤沢氏の優しさであろうと思います。藤沢氏の弱い者を見つめる優しいまなざしが読者の心を温めます。 松平定知氏の解説もまた素晴らしいです。それもそのはず、松平氏こそ藤沢周平を愛読してやまない人なのです。藤沢好きが嵩じて、NHKに完全朗読という企画を提案し続け9回ボツになり、10回目にしてやっと企画が通ったという筋金入りです。 最後に本書に収められた作品が入っている既刊本(文庫本)を紹介しておきましょう。
おっと、私は未だ『驟り雨』は読んでいなかったようです。古本屋で見つけて買い置いてあります。ついでに読んでしまおうと思います。
(追記)
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