曾子曰 吾日三省吾身 為人謀而忠乎 与朋友交言而不信乎 伝不習乎
(中略)
「あれは『論語』だよ。海の向こうから渡ってきた、ひとの道を説いた書さ」 あいの考えている事がわかったのだろう。年子は難しい顔で室内に目をやった。 「蕪かじりの百姓の倅どもに論語など教えても無駄__中須賀の外からはそんな声も聞こえる。けれど学問は、ここと」 年子はまず、自身の頭に右手を置き、それに、と今度は胸に左の手を置いた。 「ここに、宝を築くことになる。この見えない宝が一等大切なんだよ」
(本書P26-P27より抜粋)
『あい - 永遠に在り』(高田郁:著/ハルキ文庫)を読了。
まずは出版社の紹介文を引きます。
上総の貧しい農村に生まれたあいは、糸紡ぎの上手な愛らしい少女だった。十八歳になったあいは、運命の糸に導かれるようにして、ひとりの男と結ばれる。男の名は、関寛斎。苦労の末に医師となった寛斎は、戊辰戦争で多くの命を救い、栄達を約束される。しかし、彼は立身出世には目もくれず、患者の為に医療の堤となって生きたいと願う。あいはそんな夫を誰よりもよく理解し、寄り添い、支え抜く。やがて二人は一大決心のもと北海道開拓の道へと踏み出すが…。幕末から明治へと激動の時代を生きた夫婦の生涯を通じて、愛すること、生きることの意味を問う感動の物語。
夫を支え、御飯を作り、家内を整え、機を織る。久しぶりに素晴らしい夫婦のかたちを見た思いです。こういうと男尊女卑だとフェミニストから叱られそうだが、一昔前の美風として清々しく読ませていただいた。こうした夫婦愛の形があっていい。「婆はわしより偉かった」という関寛斎の言葉がこの物語の全てだ。司馬遼太郎『胡蝶の夢』、城山三郎『人生余熱あり』も読んでみたい。
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