フィーガンは砥石を置いて、ラッカー仕上げのボディを守るためのフェルトの上に、ギターを降ろした。立ちあがってサイドボードに行き、ジェムソンをツーフィンガー分注ぐと、同量の水を足した。ウィスキーが身体の中心を温めるにつれて、壁を這うように、影が動いた。
『ベルファストの12人の亡霊』(スチュアート・ネヴィル/著・佐藤耕士/訳・RHブックス・プラス)を読みました。初めてのスチュアート・ネヴィル氏です。それもそのはず、本書はネヴィル氏のデビュー作である。
裏表紙の紹介文を引きます。 かつて北アイルランド共和派のテロ実行役として恐れられたフィーガンは、和平合意後、酒に溺れる日々を送っていた。彼を悩ませるのは、常につきまとって離れない12人の亡霊。すべてテロの犠牲者だった。その苦しみから逃れるため、フィーガンは亡霊たちが指差すままに、テロ工作の指令を出した昔の指導者や仲間をひとり、またひとりと殺していくしかなかった。彼の不可解な連続殺人が、危うく保たれていた各勢力の均衡に大きな亀裂を生じさせることに!
私、アイルランドが好きです。行きつけの立ち飲み「Bon Voyage(ボンボヤージュ)」では、まずGUINNESS(ギネス)を飲み、その後JAMESON(ジェムソン)を飲むことがパターン化している。行きつけのパブ「HOSANNA(ホサンナ)」では同じくまずGUINNESS(ギネス)を飲み、その後BUSHMILLS(ブッシュミルズ)を飲むことが多い。音楽は「U2」「ヴァン・モリソン」「クランベリーズ」を好みます。ピート・ハミル著『天国の銃弾』(創元推理文庫)、石持浅海著『アイルランドの薔薇』(光文社文庫)、高村薫著『リヴィエラを撃て』(新潮文庫)は私の心に残るハードボイルド小説です。この度、これらラインナップに『ベルファストの12人の亡霊』が加わったことは言うまでもありません。 酒に溺れるヒーローが好きです。藤原伊織の小説『テロリストのパラソル』に登場するアル中バーテンダー島村、ローレンス・ブロックの小説に登場するアル中探偵マット・スカダーは我が心のヒーローです。この度、ゲリー・フィーガンが我が心のヒーローに加わりました。 本書のテーマは「みんな報いを受ける」、フィーガンが殺した少年の母親の言葉です。因果応報ということでしょうか。
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