「失礼ですけど、あたくしを殺しにいらしたの、アンブローズ卿?」 アレクシアはエセルに手を伸ばしながら、じりじりと馬車の扉からあとずさった。・・・・・(中略)・・・・・ アンブローズ卿はそのとおりというように小さく首をかしげた。「気の毒だが、答えはイエス。ご不便をかけて申しわけない」 「あら、本当に? 謝るくらいならやめていただきたいわ」 「殺される者はみな、そういうものだ」 (本書P35~P36より)
『アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う』(ゲイル・キャリガー:著/川野靖子:訳/ハヤカワ文庫FT)を読み終えました。英題は "HEARTLESS"。
まずは出版社の紹介文を引きます。 異界族と人類が共存するヴィクトリア朝ロンドン。伯爵夫人アレクシアは妊娠八カ月を迎えた。お腹の子の異能を恐れる吸血鬼の執拗な攻撃に、人狼団はある秘策を打つ。そんななか消滅寸前のゴーストが現われ、女王暗殺をほのめかした。凶事を防ぐべく暗中模索の捜査を始めたアレクシアは、やがて夫マコン卿と人狼団にまつわる過去の秘密と出会う―謎解きとユーモアと叙情が贅沢に織りなすスチームパンク冒険奇譚、第四弾。
妊娠8ヶ月のアレクシアが八面六臂の大活躍。お腹のチビ迷惑はどうやら<魂盗人>(ソウル・スティーラー soul stealer)に生まれてくるらしい。その子を亡き者にしようとする吸血鬼の攻撃をブロックしながら、女王陛下暗殺計画を探るというハチャメチャの展開にハラハラドキドキ。 暗殺計画を探るなかで、キングエア団による過去の謀略とライオール教授の秘密が明らかになる。なるほどそうだったのかっ!と納得したのも束の間、現在の女王暗殺計画が差し迫った危機としてアレクシアを襲う。作者の妄想の膨らむがままの大活劇が展開された。 それにしてもまっすぐで気丈なアレクシアはやっぱり素敵だ。 “Just my type”です。 いよいよ、次巻『アレクシア女史、埃及(エジプト)で木乃伊(ミイラ)を踊る』は本シリーズ最終刊だ。舞台はエジプトか。しかも木乃伊と踊るだと? もう何があっても驚かない。舞踏会だろうが宴だろうが好きなようにやってくれ。読む前に紅茶でも淹れよう。
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