「さ、もう寝なさい。もう一時近いぞ」
『幸福ロケット』(山本幸久・著/ポプラ文庫)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。
クラスで八番目にかわいい(?)香な子(小5♀)と深夜ラジオばかり聞いているコーモリ(小5♂)が、お花茶屋を舞台に織り成す感動の物語。疾走感のあるラストシーンが涙を誘う、初恋未満のリトルラブストーリー。幸福な未来へと走れ! 書き下ろし短編「月食」収録。
素敵なラブ・ストーリーでした。本作においても山本幸久氏の登場人物に注ぐ温かいまなざしは健在です。山本氏の小説に悪人はいません。そりゃあ、ちょっとイヤな奴、いささかヘンな奴はいます。天国の物語じゃないのですから。でもそんな人物も本当はイイやつなんです。ちょっとした怒りやジェラシーから相手を傷つけるような行動をとったり、言葉を発してしまう。でもそれはその時のいきさつからそうなったわけで、場面が違えばまた別の顔が見えてくるはず。 山本氏の小説を読んでいつも思うのは「世の中、捨てたもんじゃない」。そんなふうに思いたくて私は山本氏の小説を読み続けているのかもしれません。
私にとってこの小説のもう一つの魅力は、主人公の香な子が文学少女であること。実にたくさんの本を読んでいます。おそらく山本幸久さんがちょっと頭のいい小学高学年なら、少し背伸びすればきっと楽しめるはずと思った本を選ばれたのだろう。星新一、半村良、平井和正、ロアルド・ダール、横田順彌などなど。星新一、半村良、平井和正は私も若い頃、読みましたよ。高校生になってからですけれど。久しぶりに平井和正氏のウルフガイ・シリーズを読みたくなりました。また、横田順彌氏の『山田太郎十番勝負』とロアルド・ダール氏の『マチルダは小さな大天才』を発注しました。あ、そうそう、もう一冊、坂木司氏の『夜の光』も注文しました。これは小説中に出てきた本ではなく、読書メーターでのお気に入りさんからのオススメです。本書と似たテイストだそうです。これを読むのも楽しみです。
年明けから『ペンギン☆ハイウェイ』(森見登美彦)、『和菓子のアン』(坂木司)、『とんび』(重松清)とじんわり心が温かくなる小説が四篇続いています。まさに幸福四段ロケットで私は天国行きです。
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