「松蔵殿あんたは馬鹿だ。大事に思つているひとになら、だまされたっていいじゃないですか。信じるというのは、そういうことです」 (本書P129より)
『川あかり』(葉室麟・著/双葉文庫)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。 川止めで途方に暮れている若侍、伊東七十郎。藩で一番の臆病者と言われる彼が命じられたのは、派閥争いの渦中にある家老の暗殺。家老が江戸から国に入る前を討つ。相手はすでに対岸まで来ているはずだ。木賃宿に逗留し川明けを待つ間、相部屋となったのは一癖も二癖もある連中ばかりで油断がならない。さらには降って湧いたような災難までつづき、気弱な七十郎の心は千々に乱れる。そして、その時がやってきた―。武士として生きることの覚悟と矜持が胸を打つ、涙と笑いの傑作時代小説。
「みんな、一生懸命生きているのに、哀しいのは何故なのだろう」 生きていくのは哀しい。しかし、真っ当に懸命に生きていくならば、その哀(かな)しみもいつかは愛(かな)しみに変わる。人を信じる、約束を守る、困った人、弱い者を助ける、当たり前のことを当たり前にする人生を歩みたい。そんな想いに胸を熱くする物語でした。バカ正直も、くそ真面目も、まことに格好良いものです。
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