gmさん親子とこたつさん登場ですね
学生さんたちも、って、リアルみたいですね
ほんとは、どこかにお店も?(笑)
『みんなが嬉しい街おこしを目指して』 第六話「レストランの空白時間を埋めよう」 「信頼できる情報もいいけど、私たちのわがままも聞いてもらえるといいな~..」。ワインでほろ酔い気分になった泰子がつぶやいた。「そのわがままを聞かせてもらいたいんですが」と田中が応じると、泰子は申し訳なさそうにみんなに語り始めた。 「うちのレストラン、知ってる通りランチタイムはすごく忙しい。でもなかなかランチのお客さまがディナーにつながっていなくて、肝心の夜はパラパラって感じの日が少なくないの。たまにテーブルが満席になることもあるけどね。そして、ランチのお客さんが引ける午後2時を過ぎると夜7時頃までは、仕込みをしながら休憩タイムになっちゃうので、この時間を活かしてディナーのお客さまも増えるようにできたらいいんだけど」。泰子が悩んでいたのは、レストランというリソースをクオリティを落としたりすることなく有効に活用し、店の利益を上げたいという課題だった。 食器を褒めた津川愛莉(20)が会話に参加してきた。「うちのお母さん、いろんな人といろんなところで楽しく食事をするのが好きなの。ときどき一緒に連れて行ってもらったりするけど、ランチとかディナーとかいう時間にあまりこだわりがないみたいで。こんなに美味しいんだから、遅めのランチとか早めのディナーとかあっても、グルメな女性だったら挙って利用してくれるんじゃないかしら」。「そんな奥さんだったら、きっとグルメ友達へのクチコミ効果も大きいわよね」とさと子が続ける。「何かもうひとつふたつインパクトが欲しいね」と田中が加わるとさまざまなアイデアが吹き出してきた。 政夫と泰子が若者たちの思考の柔軟さに目を丸くしている中、古家がいろいろとレストラン側の事情も聞き取りしてくれた上で、みなのアイデアの交通整理に入った。単なる思いつきの多くが、瞬く間につながり、それらしい企画へと姿を変えていった。 ・「アーリーディナータイム(EDT:early dinner time)」をつくる ・EDTは、平日のみ15時から18時までの間の120分 ・完全予約制で、一日3組限定 ・当日の「シェフお任せスペシャルコース」を4,000円(通常5,000円)で提供 ・来店客には期間を限定したディナー割引クーポンを渡す きちんと休憩時間を確保した上で、アイドルタイムを有効に埋めることができ、3組ならディナータイムの準備をしながらおもてなしも可能で、お客さまとのコミュニケーションも大丈夫。お店のクオリティを落とすことなく、ある程度の利益も確保しながら、ディナーの利用促進やファンを増やすことができそう。ワインなど追加ドリンクがでれば十分に釣り合うなかなかいい企画だ。 あとはこの情報を、信頼できる人のつながりに乗せて拡げる方法だった。「料理教室」「PTA」「ボランティアサークル」「自治会」「ママさんバレーチーム」「食べ物イベント」...それぞれが実際に関わりがもてるネットワークを出し合った。しかし、リアルなつながりは確実ではあるがなかなか即効性や拡散性に弱い感じが否めない。しかし、フリーペーパーや新聞折り込みなどのメディアはコストに見合う効果が期待できないので、やはりネットの活用に活路を見いだそうという流れになった。 インターネットやソーシャルメディアの普及によって「いつでもだれでもどこでも」情報に触れられる環境が整備されてきた。しかし、世の中にはさまざまな情報が溢れ、自分の必要な情報を選別して取得したり、自分の情報を必要とする人にきちんと届けることがどんどん困難になってきている。いわば「いまだけここだけあなただけ」というように、発信する情報を価値づけて信頼のネットワークの中を放射状に拡散するという考え方を取り入れないと差別化は難しい。まさに「電子クチコミ」のような方法が求められていたのである。 全員のデザートの皿が綺麗になった頃、津川が「こたつ先生に相談してみたらどうかしら」と提案した。この日集まっている若者たちの共通点は、大学でこたつ先生こと和崎宏(56)の「サイバー社会論」を履修した学生であるということだった。「こたつ先生」と聞いて、こんどは政夫が反応した。「こたつさんって、あの地域SNSの!」。若者たちはまったく同じタイミングで同じように頷いた。政夫の地域活動の仲間たちをつないでいるのが、和崎が主宰する地域のソーシャルネットワークだったからである。「世間って狭いのね」という泰子のつぶやきに、若者たちが息を合わせて「It's small world!!」と応え、全員が大笑いになった。 時計を見ると、すでに午後8時を大きくまわっていた。あっと言う間の3時間あまりだったが、その密度は想像を遙かに超える濃さだった。政夫はEDTの企画を実現するための準備を、若者たちは近いうちに和崎に相談してみること、1ヶ月後の水曜夜にもう一度全員で集まることを約束して、この日の出会いはお開きとなった。 つづく この物語は、すべてフィクションです。同姓同名の登場人物がいても、本人に問い合わせはしないでください(笑) |