信長は光秀の有能さをそこまで買っていながら、好悪の情からいえば光秀のようにいかにも教養がありげでしたり顔の男がきらいであった。信長はどこか愛嬌のある男か、能力があるわりにはひどく質朴な面をもった男を好んだ。どこかユーモラスでからかえるような男を好んだが、光秀はおよそそういう男ではなかった。
『播磨灘物語(四)』(司馬遼太郎・著/講談社文庫)を読みました。
いよいよ中国大返し。備中高松城水攻めの最中に本能寺の変の急報をうけ、「どうしてあれだけの短期間で山崎までとって返すことができたのか?」という謎に対する司馬氏流の解釈と運命のいたずらのなす物語に興奮した。そして、権力者の猜疑心の深さを知るや、己を水の如く処す官兵衛の知慮に唸った。「臣ハソレ中才ノミ」と言い放つ官兵衛の聊か口惜しくも恬淡とした態度がクールでした。一昨日は高台にあるJR赤穂線・西片上駅から町を見下ろしながら、暫し、中国大返しのロマンに酔いました。幸せなひとときでした。
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