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2014年06月05日(木) 
第二十話「まちづくりクーポンプロジェクト発進!」

岡本には心配事があった。地域のボランティアによって運営されている「おのみっち」は、イベントを主宰して利用者から参加費や寄付を受けたり、デジタルサイネージの運用管理費などから維持費を捻出しているので、たとえそれが運営費を補完する可能性があっても初期費用やランニング費用が発生するとなると組み込むことは難しい。

こんな状況になると男性はいろいろ考えを巡らせてひたすら悩みこんでしまうものだが、女性は一か八か勝負をする傾向があるのではっきりしている。「こたつさん、いくらかかるんですか?」。勇気を出して訊ねたあと、期待していない回答を聞きたくない岡本は両手の平で両耳を塞いだ。「心配ご無用!」。和崎は笑いながら答えた。「スタート段階から一緒にやってくれるサイトには、セットアップも含めて無償で実装し、運用費も直接は頂かないようにします」。数人が目を閉じて、なにかを拝むかのように手のひらをあわせた(笑)。

このシステムを外部から依頼された受注システムとして開発するとなると、調査を含めて数千万円の見積りが出るくらい、すでに資源を投入しているが、費用をアプリケーションサービスプロバイダーとしてのシステム運用費やソフトウェアのパッケージ販売の形で回収するのは非常に難しい。時間がかかってもいいから、それぞれのSNSが運営するサイトで、クーポンが成立した商品の売り上げから利用料を徴収するという方法が現実的である。運営するSNS側のリスクを最小限に抑えてプログラムへの参加を促し、地域展開を拡大深化させるのが得策である。

低リスクとはいえ、SNS側にも負担はかかる。「クーポン管理者」という役割を担う人が、店舗登録や商品登録の承認、推薦者との連携などの作業を行わなくてはならない。推薦者が店舗登録をクーポン管理者に申請し、認可されたら店主が店舗情報や商品情報を登録、商品情報について推薦者が確認した上で、クーポン管理者が承認してサイトに商品が並ぶことになる。クレームについては、一括でインフォミームがフォームで受け付けるので一次対応は不要だが、どうしても現地コンタクトが必要になる場合には、クーポン管理者らに対応してもらうこととなる。

クーポンサイト全体の信頼性や安心感を、それぞれのSNSとクーポン全体を運営管理するインフォミームで請け負うこととなるのだ。また、推薦者はいないがクーポンの目的にかなう店舗の申請は、SNS側が推薦者に代わって登録・連携することとなる。「作業のボリュームはまだ見えませんが、最初から申請が殺到するとは思えないし、わたし食べることが大好きで仲良しのお店もたくさんあるので、少しずつ慣れていけば大丈夫ですね」。岡本はほっとしたのかいつもの笑顔に戻っていた。

「クーポンを購入するときの決済はどうするのですか?」と井上が痛いところをついてきた。直接各種クレジットカード会社から電子決済ができればよいのだが、となるとVISA、マスター、JCBなど、多くのカード会社との契約が個別に必要となり、立ち上げ段階では現実的ではない。クレジットカードを用いた少額決済には、現在さまざまな事業者が参入しているが、手数料の料率が低くてもあまり無名な事業者をつかうのはサイトの信用にも響く。当初は「PayPal」をはじめするメインどころに絞る予定だ。米国Amazonでは自社の決済機能を外部に提供するサービスを始めた。利用者はいつもの慣れた画面で決済ができるのでとても便利で安心だ。近い将来、アマゾンジャパンだけでなく楽天やYahooなどの事業者もこの方法に参入してくると予想されており見通しは暗くはない。

木多見が「店舗側の負担をポンパレの半分くらいにできたら万々歳だよね」と注文を出した。商品の販売価格によってレートは異なるが、2000円前後のメニューの場合、4割近くが運営会社の取り分となっている。少額決済に5%、SNSと推薦者に5%、利用料を10%とすると、なんとかそのラインは確保可能だ。また、販売価格が高くなると利用料の料率をさげることでさらに店舗側の負担を軽減することができる。十分に市場競争力のあるビジネスモデルになるはずだ。「いけるんじゃないかな♪」。行司が明るい声をかけた。

「では、そろそろ煮詰まってきたようなので、具体的にどのように進めるか、こたつ先生から提案をお願いできますか」。いつも美味しいところを持って行く古家がまとめにかかった。「今回の企画には乗れないという人はいますか?。できる範囲でどんな協力でも熱烈歓迎なんですが」と田中が挙手を求めたが誰からも手はあがらなかった。「では協力してくれる人は♪」と問いかけると、まるで小学校一年生の教室のように、全員が「ハイ!」という元気な声を出して挙手をした。みんなで意見をを交わしあい、一所懸命に磨いた企画を、地域のために実現させようと気持ちをひとつにしているのがよくわかった。

では、全員でいつも一緒に動くというのも難しいので、「企画・運営チーム」「店舗獲得チーム」「顧客拡大チーム」「開発・デザインチーム」のコミュニティを作って、互いに動きを見える化しながらリソースを共有して推進していくことにしましょう」と和崎が提案した。「企画・運営チームのリーダーは..」と言いかけると、木多見が即座に手を挙げ「行司さんと今日は息子にたかってお寿司を食べにいっている三村晴美さんの3人でやります」と声をあげた。行司の少し驚いたような顔から根回しなどできていないのは明らかだったが、普段から協働作業を行っている仲なのでいやも応もなく、複数の「よろしく!」という声にリーダーが決まった。

本来はSNSユーザからの推薦で登録店舗を決まるのだが、サイト立ち上げからしばらくはある程度の店舗数を確保するために、運営側で店舗を発掘し趣旨を理解して参加してもらう必要もある。「店舗獲得チーム」は宮越と宮里のオーナーシェフコンビに、専門学校長の水野が加わって、クオリティの高い店舗つながりを芋づる式に当たることとなった。畑井、清水、セバスチャン藤原(26)の教師3人組がSNSユーザ側のフォローを担当することとなった。「顧客拡大チーム」は、柳川、松岡の仲良しコンビがリーダーとなり、藤田や直美がお気に入りのイケメンを拉致して加わった。「開発・デザインチーム」はインフォミームが担うことで、どこかのチームにだれもが希望して参加するという形でスターターとなる陣容が固まった。

その後、「ひょこむ」のコミュニティがそれぞれのリーダーの下で立ち上がり、さらにたくさんのメンバーを巻き込みながら「まちづくりクーポンプロジェクト」は始動した。

第一部おわり

この物語は、すべてフィクションです。同姓同名の登場人物がいても、本人に問い合わせはしないでください(笑)

閲覧数949 カテゴリ日記 コメント2 投稿日時2014/06/05 06:15
公開範囲外部公開
コメント(2)
時系列表示返信表示日付順
  • 2014/06/05 18:04
    かなり現実的な数値が出てきましたが、その辺りの説明をちゃんとできるようにしないといけないですね
    次項有
  • 2014/06/06 00:21
    > ももたろうさん

    まだなにも決定した数字ではありませんので、柔軟に考えてもらえるといいのではないかと思います。
    次項有
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