カクテルの永遠のテーマは、「強くなくて辛口で」だと言われる。辛口にするとアルコール度は強くなり、逆に弱めのカクテルをつくろうとすると、どうしても甘口になってしまう。 (本書P104より)
『バーのある人生』(枝川公一・著/中公新書)を読みました。 まずは表紙の見開きにある紹介文を引きます。 バーの重い扉の向こうには、非日常の空間が待っている。そこは、酒だけを売っている場所ではない。客のひとりひとりが、バーテンダーと対面し、一期一会の時間を購い、空間に戯れる町の”秘境”である。そこには、シキタリもあれば、オキテもある。しかしそれらは、居心地をよくするものでこそあれ、がんじがらめの規則ではない。これから出かける人の背中をそっと押し、行き慣れた人をさらなる一軒へ向かわせる、体験的バー案内。
酒飲みは蘊蓄を語るのが大好きです。枝川氏も例外ではない。本書を読むとバーに入る時の心構えとバーでの過ごし方、カクテルの知識と一とおりの知識が得られる。居酒屋に一人で入れなければ大人の男とは言えない。バーに一人で入れなければ成熟した大人とは言えない。バーに通い続けるうちに人は成熟を増し、やがては枯れていく。行きつけのバーの扉を開け、黙ってカウンターにつくといつもの酒が出てくる。至福の時間を過ごし酔いをみとめながらも決して乱れることがない。そしてさりげなく勘定を払い帰っていく。それが成熟した一人の大人の行き着く姿だろう。それが枯れると言うことだろう。そんな枯れ方ができれば本望です。
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