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2010年11月20日(土) 
放送と通信の総合展示会「InterBEE」が昨日まで幕張メッセで開催されていた。通信機器事業者が主に放送業界の人たちに最新技術を紹介したり、新製品の売り込みを行う場と考えてもらってもよい。広い幕張メッセの2ブロックに大小450社がひしめき合うようにして自社製品の優位性をアピールしていた。

最近、UstremやStickamでストリーミングライブ中継に携わる機会が多くなり、これまでの手持ちの機材では複数のカメラを対応できない、でもしたい要件が増えてきた。例えば、複数のカメラを自在にスイッチングしたり、ライブ映像にタイムリーなテロッピングをしたり、ライブ中継のクオリティを安定させたり..人間いろいろ考えると欲が出てくるものだ。入場するまでは、デジタル・サイネージについての最新情報を得ることと、上記の懸案を解決できる機材を一同に比較することが目的だった。 あてどもなく広い会場をブラブラと散策していると、さほど大きくないブースの中の不思議な黒い箱に目が止まった。20センチ強の四角の前面にびっしりとコネクタ端子が並んだ奥行き45センチのボックス。何に使うのだろうと冷やかしで説明員の男性に声をかけた。それが「トライキャスター(TriCaster300)」との出会いだった。

TriCasterは、ビデオやコンピュータに精通していない人でも、プロ並の演出による番組制作ができる映像制作システム。このポータブルなボックスには、番組制作に必要なスイッチャ、テロッパー、クロマキーヤー、バーチャルセット、ノンリ ニア編集などといった、高度な映像制作に必要な機能がすべて搭載されている。ボタンひとつをクリックするだけでライブストリーミング映像配信までできてしまうというのだ。他社も放送局向けに同様な機能を提供するシステムを展示していたが、どれもがひとつひとつの機能に装置が割り当てられていて、全体を賄うには大きな空間と多数の技術者と高額のコストがかかることは素人目にも明らかだった。

簡単にいうと、テレビ局の中継車をコンパクトにまとめたボックスが TriCasterで、高度で高品位なテロッピングがいとも容易にオーバーレイできるだけでく、内蔵しているバーチャルセットを使うと仮想スタジオ(オリジナルデータ作成可能)からの中継までできてしまう。まさに「魔法のワンボックス」だった。ブースでは製造元であるNewTek社(テキサス州サンアントニオ)から来られたのだろう若づくりの金髪女性が、スタジオ用の上位機種TriCaster850を使って操作説明のデモンストレーションを行っていた。デモに使っていた自分の写真まで若づくりという徹底のしようには笑った。
http://www.newtek.com/

イベント、ライブ放送、ストリーミング放送、セミナーなどの様々なコンテンツ配信を、TriCasterの電源を 入れて、ネットワークに繋げるだけで、簡単に番組制作そして、ライブストリーミング映像配信することができる。これだけでも凄く助かるのに、デモンストレーションではコンテンツづくりをする人間にとっては喉から100本くらい手がでてきそうな魅力的な機能が手軽に素早く実演されていた。多機能であるが故にマスターするまでには相当時間と経験が必要だろうと尋ねると、直感的ユーザーインターフェースになっているのでわずか4時間程度のレクチャーでほぼ完璧に使いこなせるという。規格による制限もほとんどなく、利用者目線でなんでもかんでも組み込んだというイメージだった。これだけの性能を持つ従来機(コンパクトなものはない)は、2年前では1000万円近く、昨年でも800万円前後はしたと別の専門家から聞いたが、それが300万円以下で実現してしまうという技術の進歩には驚きを隠せない。

「情報コンテンツの地産地消」を目指し実戦配備を始めた「SNSサイネージ」。管理者のインターフェースに改良の余地があるものの、サイネージ端末の機能や制御、通信経路による課題などが解決し、超低コストのデジタルサイネージセットとしての完成度は十分市場に提供できる段階まできた。インターネットTVと連動させて従来から地域情報コンテンツのギャザリングの場になってきたSNSのムービー機能にも、多数(実働2年半の「ひょこむムービー」では、一日平均約3本にあたる2,395タイトル:2010年11月19日現在)の動画コンテンツが集積され、地域市民メディアの顕在化の兆しを証明した。撮影機材の高度化と低廉化、コンテンツ技術の向上、通信速度の高速化があり、どんどんとプロと素人の垣根が下がってくる中で、スタジオなどコストのかかるコンテンツのクオリティを確保する装置については放送局に足下にも及ばないというのが現状だ。しかし、TriCasterはそんなハンデを一挙に払拭してくれるだけのパワーを内在しているといえる。

多額の投資をしてまで、アマチュアのコンテンツづくりにそこまでのクオリティを要求する必要はないのではないかという意見は当然ある。プロの仕事はプロに任せて、自分たちはそれなりに楽しく続けていけたらいいというのは間違いではないだろう。しかし、地域住民が本当に満足でき、動機付けされるコンテンツを提供し続けるのであれば、地域市民メディアはケーブルTVより住民層に近い一段の下のレイヤーを担うメディアに育つ必要があり、そのためには「素人仕事」などという蔑みを受けないだけの実績を持つ必要があると思われる。

私たちは、1997年から「ネットデイ」という活動を始め全国に拡大した。ネットデイは、公立小中学校において、すべての教室からインターネットに接続できる環境を、保護者・教師・地域住民・外部ボランティア・児童生徒で実現する配線工事の市民活動である。文科省は目標年次を2005年に定めて整備を進めていたが、自治体の行政予算の都合で敷設の目処がたたない地域の学校単位でネットデイは拡大していった。この活動の中では、電気・建築・配管・ネットワークなどさまざまなプロフェッショナルが要所を固めて素人工事を支援・指導していたが、当初は「工事品質に課題がある」として仕事を奪われる心ない工事業者たちの非難を浴びた(実際に工事経費は業者工事の1/10~1/8で収まった)。

ここで登場したのが、FLUKE社のネットワーク測定器だった。1式100万円を越える高価なテスターだが、ネットワークケーブルの品質や障害をたちどころに明らかにしてくれる優れものだった。われわれのネットデイでは、兵庫県教委(2式)と伊丹市教委、弊社の計4台を、ネットワーク講習会を受けて基礎的な技術を習得した高学年の生徒で組織された「検査班」の子ども達が、大人達が汗をかいて配線したケーブル1本1本を測定した。先生が工事した配線が規定の数値をクリアできないなどということは日常茶飯事で、そんなときは普段の教室と立場が逆転して、先生が子ども達の指導に従ってやり直すというような痛快なシーンが続出した。子ども達がいろんな意味で自信をつけたことは言うまでもない。

プロの工事業者も持っていないような機材を駆使し、全てのケーブルの検査をもれなく行い、全校合格となって「閉会式」が開催されている最中の体育館に駆け込んでくる子ども達の勇姿に、数百人の参加者から惜しみない拍手が送られる。単に教室にケーブルをつないだだけではなく、子ども達を真ん中に地域と学校、教師と保護者、住民と住民の絆を紡いだネットデイに、クレームがつけられる工事業者は消えた。

「プロがうなるような素人工事」がネットデイであったが、いま時代はかわり「放送事業者が驚くようなコンテンツづくり」を行う必要性があると思われる。またそのために、TriCasterがわたしの前に降臨してきたという思いが、日を追ってだんだんと強くなってきた..買ってほしいな~♪

閲覧数840 カテゴリ日記 コメント3 投稿日時2010/11/20 06:34
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