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2010年12月03日(金) 
11月末に横浜と館山で「SNSサイネージ」の説明会をやってきました。横浜での報告書の「Yストリーム」の梅田さんが上手にまとめてくれていますのでご紹介します。初めての方もご一読いただき聴いたような気になってください(笑)。
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横浜ストリーム・ラボ vol.11 レポート 

『兵庫県伊丹市「SNSサイネージ」の事例紹介』

2010年11月26 日、tvk2階第一会議室にて、横浜ストリーム・ラボの第11回目が開催されました。当日は、インフォミーム(株)代表取締役)和崎宏さんをお招きし、兵庫県におけるSNSサイネージの取り組みに関してデモンストレーションを交えてお話ししていただきました。
現在のサイネージの課題や和崎さんの考えるSNSサイネージのコンセプト等、講話の内容を紹介いたします。

▽インターネットは手に入れたが、その恩恵はまだ受けていない
 今回のSNSサイネージ提案の背景として、既存メディアの崩壊があります。放送界の現状は、キー局がスポンサーを獲得して番組を制作、それが地方局に降りてくる、いわゆるトップダウンのビジネスモデルです。しかし地域の情報はこの仕組みには載りにくいもの。メディアで多く取り上げられているグローバルな情報はどこまで必要かという疑問も出てきます。現在、物事を調べたりする時にグーグルで検索する、ググると言う文化が浸透していますが、必要な情報はレイティングの上位にはでてきません。情報自体発信されているのにグローバルな世界の中に霧散してしまっています。市民はインターネットというメディアを手に入れたがその効果はまだありません。真に豊になるためにデジタルサイネージをSNSとつないで、より身近な形で地域の情報化のきっかけづくりにできないかと考えています。

▽ サイネージ端末は“タコツボ”
地デジ完全移行、ブロードバンド100%化された来年度以降の総務省の三本柱は、1.ホワイトスペースの活用、2.デジタルサイネージの促進、3.地域市民メディアの育成、となっています。また、日本機械工業連合会の報告書によるとデジタルサイネージの課題は下記のようになっています。
・コスト(初期・運用)  端末は多機能で高額、運用コストに直結するストレージサーバーなどは桁違い
・ロケーション  広告媒体としてみると設置場所が限られる
・コンテンツ   同じものの繰り返しでは誰も見なくなる (長田の鉄人28号前が顕著な例)
・マルチユース  他社メーカーのサイネージとのリソース共有ができない。
・クロスメディア インターネット、ケーブルTVなど他のメディアとの連携がない。
・効果測定  どれだけ見られたからどれだけ効果があったという指標がない
・ビジネスモデル 上記のさまざまな課題によりビジネスモデルとして成り立っていない

総務省補助事業の申請の半数にデジタルサイネージが含まれています。その殆どがその予算でコンテンツを作っていますが、下記のような悪循環が起きています。

●予算がなくなり、コンテンツが作れなくなる。
              ↓
●コンテンツがないから、誰もサイネージを見ない。
              ↓
● 見る人がいないから、コンテンツを補充できない。

そのような観点から、Ystreamで取り組んでいる人材育成は重要なポイントであると考えます。
また、今のサイネージは“タコツボ”だと思います。例えば、NEC製品のコンテンツは富士通や
NTTのものでは使用できません。メーカー囲い込みのビジネスモデルの中にコンテンツが閉じこめられてしまっています。

▽ 人のつながりがあるコンパクトシティを狙う
現状の課題を解決するためにSNSサイネージを考案しました。まず、NPOや地域のボランティアが地域を支援しながら作っている映像コンテンツをサイネージを使ってみんなに見えるようにするということが最初の構想でした。次に、どういう範囲の情報をどこで流すと効果的であるかということを検討し、兵庫県ではすこし前までは住民達のたまり場だった「商店街」というロケーションにほぼ絞り込みました。今回設置した伊丹中央サンロード商店街は4km四方に25万人が住むコンパクトシティ・伊丹でもっとも歴史のある商店街です。同商店街は昨年11月にアーケードの付け替えをした際に、商店街のどこでも無料でネット利用ができるように5台の無線ルーターをアーケードに設置しました。しかし、商店街の利用者には高齢者が多いことなどからネット環境を利用している人はあまり見かけられません。この場所にサイネージを設置した理由のひとつは、この環境にありました。また、8年前より、地元の伊丹高校が情報化による商店街の活性化の研究を行っており、商店主と生徒とのコンタクトなど人間関係の基盤ができていました。このため、説明や交渉ごとが非常にスムーズにすすみ、提案から 2ヶ月半で設置に至りました。

▽ 構成も取り扱いもシンプルに
 システムは、テレビモニターとSTB(セットトップボックス)を無線LANにつないでいるだけものものです(有線接続もできます)。店主など使用する人は、26インチのテレビとSTBを店頭に出して、それぞれの電源を入れればよく、閉店時は、電源を切ってしまうのみです。伊丹では同サイネージを同商店街に9台、JR伊丹駅に1台、阪急伊丹駅に1台、伊丹高校に1台、合計12台を設置し、それぞれが異なる番組編成で試験放送を行っています。
 
▽ 電子看板への割り切り
SNSサイネージは、コストを安くするためにタッチパネルや顔認証などの不要と思われる機能をのぞき、「決められた番組」+「Ustream」の情報表示ができる「電子の看板」として割り切っています。コンセプトを整理すると下記のようになります。
・ シンプルサイネージへの特化
・ 汎用機器の利用(低コスト)
・ 地域SNSの活用(コンテンツギャザリング)
・ ムービー連携(マルチユースプラットフォーム)
・ 地域SNS連携(コンテンツ互酬・クロスメディア)
 Linux動作のSTB(上記)の価格はセットアップ費用を含めて 5万円 。全体としてもモニターの費用が加わる程度です。コンテンツに関してはSNSのムービー登録機能を活用しています。 兵庫県域の地域SNSサイト「ひょこむ」では、放置プレイながらスタート2年半で約2,500件(3件/日)が登録されており、地域SNSのムービー機能に動画コンテンツのギャザリング(集約機能)があることが明らかになっています。しかし、これだけでは地域ニーズに沿った十分なコンテンツを賄うことはできず、ひとつのSNSサイト単独の人材育成だけではコンテンツの確保は困難です。よって「コンテンツ互酬制」という考え方が生まれてきます。
コンテンツ互酬とは、コンテンツ不足に悩むSNSサイト同士で互いの番組を融通し合うという仕組みで、互いに支え合いながら補強し合うことです。地域SNSサイネージであっても、配信される番組が地域限定である必要はありません。それより他地域の優れた番組をコンテンツの穴埋めに活用することにより、相互補完が可能となって人的交流や購買につながる可能性があります。費用負担なしで他地域のコンテンツを入手する仕組みは一般的にはフリーライダーを生みやすい構造ではあるが、信頼関係を基盤とする地域SNS間連携の上で展開することで、多数のサイトが参加する緩やかなバーター方式が成立します。ビジネスモデル化を急ぐあまりの不要な集金システムや自由な拡大を阻害する無駄な規則を作らずに全体を運用することは重要なポイントです。
SNSサイネージでは、「いいかげんはよいかげん」環境を社会適用させるために、コンテンツの権利処理や情報モラルなどについてきちんとした知識を有する「サイネージ管理者」がコンテンツ認証や互酬、番組編成及び各サイト運営を行います(設置のためのSTB管理はインフォミーム社が一括担当担当)。その上で、(自店にサイネージを導入した店主など)自分の担当するサイネージに、指定編成以外の時間帯を使って番組編集権を持つ「サイネージ管理人」を置きます。このようにして、より自由度の高い環境を提供しながらコンテンツの安全性とクオリティを確保する仕組みが、人の関係性の中で成立していくことになります。

▽ 5年のアプローチが成功の鍵
  SNSサイネージの未来は、課題として取り上げたものですが下記をポイントと考えています。
・ 多様なデバイスへの対応
・ 情報コンテンツの地産地消
・ 新たな地域ビジネスの創造
・ 地域再活性化の情報プラットフォーム(ヒト・モノ・カネの循環)

これらの取り組みに関して今後5年のアプローチが成功の鍵を握っているのではないかと和崎さんは展望されました。

和崎宏(わさき・ひろし)さんプロフィール
 企業や自治体の情報コンサルタント事業を営む傍ら、阪神淡路大震災に情報ボランティアとして関わり、パソコン通信によって現地と後方支援グループとの橋渡しを行った。96年7 月にインターネットプロバイダー「インフォミーム株式会社」を兵庫県姫路市に設立。97年からはボランティアが学校の校内LAN を整備する運動「ネットデイ」を核とした教育改革ブログラム「はりまスマートスクールプロジェクト」を成功させた。06年からはSNSエンジン「OpenSNP」の開発に着手。日本型地域ネットワークとWEB2.0的ツールを融合させた仕組みは、地域SNSとして高い評価を受けると共に、公共系地域ネットワークの成功事例として全国各地の活動の地域活性モデルとして採用されている。情報 通信技術を活用した地域活性化ツール開発・運営の第一人者であり、情報化で人と人をつなぐ「達人」として活動の範囲は広い。
日経地域情報化大賞 2004(CANフォーラム賞)、平成16 年度地域づくり総務大臣表彰、日経地域情報化大賞2008(グランプリ)、平成22年度情報通信月間近畿総合通信局長表彰を受賞。総務省、国土交通省、文部科学省などの委嘱委員を歴任、08年より総務省地域情報化アドバイザー。博士(環境人間学)
単著に「地域SNSによる地域情報化に関する研究」(博士論文)、共著に「地域 SNS最前線-Web2.0時代のまちおこし実践ガイド」(アスキー)、「地域をはぐくむネットワーク」(昭和堂)、「ネットデイで学校革命!」学事出版、「IT2001 なにが問題か?」岩波書店、「感性哲学II」東信堂などがある。

【参考サイト・ブログ】
「SNSサイネージ」の初舞台! (こたつねこのブログ)
http://sns.city.morioka.lg.jp/blog/blog.php?key=38358
鉄人サイネージ誕生!  (こたつねこのブログ)
http://sns.city.morioka.lg.jp/blog/blog.php?key=38680

当日の様子は下記のサイトでご覧いただけます。

【動画】
横浜ストリーム・ラボvol.11 「兵庫県伊丹市「SNSサイネージ」の紹介(1)」
http://www.ustream.tv/recorded/11090362
横浜ストリーム・ラボvol.11 「兵庫県伊丹市「SNSサイネージ」の紹介(2)」
http://www.ustream.tv/recorded/11090842

閲覧数1,110 カテゴリ日記 コメント2 投稿日時2010/12/03 08:23
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