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2014年06月27日(金) 
第二十五話「地産地消のおもいが深まる仕掛け」

「今日は地元の伝統野菜『かわずうり』で美味しいポタージュを作ってみましょう」。マコトが手にしたのは太短くて淡緑色の地肌に濃緑色のカエルの背中のような模様が入っている25センチくらいの可愛らしい瓜。7月中旬から9月下旬に収穫され、昔から漬け物の材料としてよく使われていた。リーノの裏には有機栽培の畑があり、よく見る野菜に混じって季節の伝統野菜が栽培されている。かわずうりの横には、夏野菜の妙金茄子や本田ちりめん紫蘇が収穫を待っていた。

「では材料の用意をしましょうね!」と大宮が号令をかけると、主婦の前田早智子(53)がテーブルのトレーから玉ねぎを取り出し、塩、こしょう、コンソメを並べた。「ポタージュスープなのに、ミルクもクリームもバターもいらないんですか~?」と三村が訊ねると「晴美さんは予習してきてないわね」と津川尚美(52)が突っ込む。このメンバーは地域SNSのコミュニティで情報共有することになっており、マコトが事前に書き込んだレシピを三村は見落としていたようだ。「三村さん、ミルクもクリームもバターも使わないところがポイントですよ。あとはあなたが得意なオリーブオイルさえあれば、不思議なくらい美味しいポタージュができます」とマコト。オリーブオイルと聞いて、三村は何故か胸を張った(笑)。

かわずうりは縦4つ切りにしてさらに1cm厚さにスライス。玉ねぎは繊維に沿って5mmくらいの薄切り。厚手の鍋にオリーブオイルを熱して、玉ねぎがしんなりするまでいため、かわずうりを加えて油が全体に回るまで軽く炒める。塩・こしょうをして鍋に蓋をし、ごく弱火で30分以上蒸し煮。うりが木べらで簡単にくずせるほどやわらかくなったら、水とコンソメを加えてフードプロセッサーでピューレ状に砕く。これを目の細かいざるなどで漉し、硬い皮や繊維を取り除く。漉したスープは再び鍋で軽く温めてできあがりである。さすがみんな料理慣れした主婦、マコトからちょっとしたコツを教えてもらうと手早く上手に仕上げることができた。

メインの担当は毎回シェフだ。この日は「伊佐木(イサキ)のグリル・ラタトゥイユ添え・バジルとバルサミコ酢のソース」をマコトが披露することになっていた。イサキは朝方の定置網であがったもので漁協から直接分けてもらった。白身でマダイより柔らかく脂肪が多ので、刺身・焼き魚・煮魚・唐揚げなどいろいろな料理につかえる万能魚。初夏が旬の地元の味覚だ。これにフランス・プロヴァンス地方の野菜の煮込み料理のラタトゥイユを添えて、爽やかでコクのあるバジルとバルサミコ酢のソースを組み合わせる。いかにも素材を大切に活かすイタリア料理のお手本のようなコーディネートだ。

イサキは2枚におろして4つ切りに。水洗いして水気を拭きとって、身の厚い部分に切込みを入れて塩コショウを振りかける。オリーブオイルを張ったフライパンを中火にかけ、イサキを盛り付ける側を下にして並べて、焼き色がつけばひっくり返し、反対側の面も焼き色がつくまで焼く。オーブンは220度に余熱しておき、天板にイサキを並べ、ローズマリー、タイム、ニンニクをのせてオリーブオイルをかけ、オーブンに入れて7~8分焼く。

マコトの横では、津川がイサキと格闘していた。「わたし二枚目は好きなんだけど、二枚におろすのはあまりねぇ~」。意味不明な発言をしながらも、もう一本のイサキの下ごしらえをなんとか終えた。娘ならもっと上手にできるらしい(笑)。黒一点の参加となった市役所職員の三上寛司(47)は、厨房の中で大きな身体を窮屈そうに折り曲げてラタトゥイユの鍋と闘っていた。「食」×「人」×「地域愛」を三本柱としたシティプロモーションを担当している三上は、旧知のマコトの取り組みに可能性を感じて、開催予定のすべての日の有給を取って加わっていた。

ナス、パプリカ、タマネギ。ベーコンを1センチ角に切っておき、オリーブオイル、みじん切りのニンニク、赤唐辛子を鍋に入れ、中火で炒めてニンニクの香りが出てきたらベーコンを入れて炒める。ベーコンの油が出てきたらパプリカとタマネギを入れ1分程度炒めてからナスを入れさらに1分炒める。三上が壁掛け時計の秒針ばかりを気にしていると、「時間ではなく素材との会話なんですよ」と調理のコツを伝授するマコト。プロに手ほどきを受けながらの調理は、全員がひとつになって和気藹々と笑い声が絶えない楽しい時間として過ぎていった。

この取り組みには、可能な限り材料は持ち合わせて素材は地元にこだわろうという、みんなで決めた申し合わせがあった。中には自家菜園を持つものもあり、兼業農家の主婦も加わっていたので、会場となるどこのレストランでも新鮮で安全な自慢の野菜が揃っていた。手持ちのない材料は買いだしすることになるが、これもありがたいことに商店街の「やまだストアー」には地産地消コーナーがあり、毎朝近隣の農家から採れたての野菜が持ち込まれ並べられていた。それでも入手できないものは、購入する際にできるだけフードマイレージの短いものを選ぶという徹底よう。できあがった料理の食事会では、さまざまな地元素材の話題で盛り上がることが多く、当然のことながら「地産地消」へのおもいは自然により一層深まっていった。

つづく

この物語は、すべてフィクションです。同姓同名の登場人物がいても、本人に問い合わせはしないでください(笑)

閲覧数833 カテゴリ日記 コメント2 投稿日時2014/06/27 04:51
公開範囲外部公開
コメント(2)
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  • 2014/06/27 06:40
    作ってみたくなりますねえ
    材料が揃うかはわかりませんが
    次項有
  • 2014/06/27 07:04
    > ももたろうさん

    一番苦労したのがメニューとレシピ。
    ももたろうさんの「コツ」で再現してください♪
    次項有
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