■バックナンバー
■RSSフィード
RSS 1.0 RSS 2.0 Atom 1.0
■このブログのURL
http://onomichi-sns.jp/blog/blog.php?key=42897
2016年02月15日(月) 
昨日の講演のあと、阪神淡路大震災被災地支援ボランティアとして、ともに汗を流した仲間のガイドで、彼がライフワークとしているため池(狭山池)をシンボルとした地域づくりの現場を案内してもらうことができました。軽い気持ちでガイドをお願いしたのですが、ため池の歴史と文化はもちろんのこと、それを支えた先人たちの知恵と技術、そして故郷への愛着を基盤とした地元住民の協働への取り組みに、大きな感銘をうけ、さまざまなことを学ぶことができました。

大阪狭山市は、大阪南部の南河内地域にある、面積約12平方キロ、人口6万人弱の比較的小さな町です。雨が少ないこの地方では、農業に必要な水を確保するために、古代からたくさんのため池がつくられてきました。大阪は、兵庫県、広島県、香川県についでため池の多い地域です。昨今の都市化の影響でその数は減りつつあるというものの、今もなお大阪狭山市内には140を超えるため池があります。ため池の面積や河川の流域を加えると、水面がまちに占める割合はおよそ1割にもなり、「水面のある風景」は、大阪狭山市に暮らす人たちにとって最も身近な風景の一つなんです。

大阪狭山市内で最も大きなため池が「狭山池」です。その歴史は古く、『古事記』や『日本書紀』にも登場する、現存する国内最古のため池です。築造は7世紀前半にさかのぼり、今年が1400年にあたる節目の年となっています。狭山池は、長い歴史の中で何度もも改修が繰り返されてきました。奈良時代の行基(弘法大師)や鎌倉時代の重源(ちょうげん)など、歴史上著名な人物が数多く池の改修にかかわってきました。また、各時代の最先端の土木技術を用いて改修工事が行われていたことも、最近の調査で明らかになってきていて、安藤忠雄設計の「狭山池博物館」では、実物を展示してわかりやすく解説されています。

狭山池は、灌漑(かんがい)用のため池としてはもちろん、『枕草子』に「さ山の池」という記述が登場するのをはじめ、多くの歌や絵の題材にもなっていて、風光明媚な池としても知られています。その美しさから、昭和21年(1946年)には大阪府の「史跡・名勝」第1号に指定されました。1,400年という長い歴史を持ちながら、今なお流域の田畑を潤し続ける狭山池は、まさに大阪狭山市のシンボルというべきため池です。

その狭山池で、池の歴史始まって以来最大規模の「平成の改修」と呼ばれる改修工事が、昭和61年(1986年)から足かけ16年の歳月と総事業費447億円をかけて行われ、平成13年3月に完了しました。狭山池から流れ出る川の下流域では、都市化の影響で水田やため池だったところが、次々と宅地や道路へと姿を変えていきました。その結果、それまで大地が持っていた水を蓄える力が低下して、たびたび水害が起こるようになりました。特に昭和57年(1982年)8月の台風10号がもたらした大雨では、狭山池下流が氾濫して、松原市などで3,000戸以上の家屋が浸水する大きな被害になりました。この水害をきっかけにして、それまで灌漑用のため池として利用されていた狭山池が、洪水を調節する機能を持った治水ダムに生まれ変わったのです。

この工事の間は、住民は慣れ親しんだ池に近づくことも難しく、改修の完成をひたすら心待ちにしていたそうです。そして、狭山池公園として整備された池の周囲には、一周約2,850メートルの周遊路が設けられて、散歩やウォーキングコースとして多くの住民に利用されています。併せて、待ち焦がれた狭山池の新しい復活を起爆剤として、「狭山池まつり実行委員会」が官民協働で立ち上げられることになります。実行委員会は、市民のシンボルである「狭山池」の再発見と水との共生、わが町の歴史・文化の振興と共有、人づくり・まちづくりを市民の手で作り育ててゆこうと目的で、故郷の誇り「狭山池」をいつまでも美しいままに未来に繋いでゆく活動を展開しています。長い堤上の遊歩道を歩いていても、ゴミひとつ、吸い殻ひとつない環境が保たれているのは、こんな思いを共有する住民のおかげだと教えてもらいました。

また、「狭山池さくら満開委員会」によって、狭山池公園の中につくられたバタフライガーデンには、蝶が吸蜜する花や、産卵・生育するための食餌植物が植樹されています。現在、花の咲く吸蜜植物が18種類330本、蝶の食餌植物29種類235本が植えられていて、年間を通じて40種類の蝶が観察できるそうです。バタフライガーデンには、四季それぞれ彩り豊かな花が咲き、年間を通じてたくさんの蝶が舞い、狭山池公園を散策する人たちの憩いの場所であり、子どもたちの自然環境教育の場所になっています。

このような素晴らしい活動を展開している実行委員会のメインイベントは、毎年ゴールデンウィークあたりに開催する「狭山池まつり」。水辺に設置された「龍神舞台」などでの住民による歌や踊りのパフォーマンスというイベントだけでなく、定期的に実施している「クリーンアクション」と呼ばれる清掃活動や環境保全活動がボランティアの手によって展開されています。昨今は8万人を越える来場者が集う大きな事業となりました。2016年は4月23日(土)と25日(日)に実施される予定で、23日の夜には、かがり火と灯火で池の周囲を囲む幻想的な「狭山池灯火輪」が開催されます。ぜひとも、日本最古のため池を囲む市民協働プロジェクトの灯りを、観賞にいってこようと考えています。

閲覧数885 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2016/02/15 17:05
公開範囲外部公開
コメント(0)
  • 次項有コメントを送信
    閉じる
    名前 E-Mail
    URL:
    ※画像に表示されている文字を入力してください。
■プロフィール
こたつねこさん
[一言]
地域を元気にする情報化に貢献したい♪
■この日はどんな日
■最近のファイル
■最近のコメント
■最近の書き込み